Great Escapes

for great landscapes

阿蘇への大脱走 Day4 - 2023/5/28

阿蘇自転車屋さんがくれた4日目。

走行ルート

内牧温泉→阿蘇パノラマライン→中岳火口→長寿ヶ丘公園(ラピュタの道入口)→二重の峠→熊本空港

距離約88km 獲得標高約1400m

穏やかに見えた最終日の朝

ここまで3日間、超絶贅沢な旅を続けてきたけど、あと阿蘇で是非とも走りたいところは、パノラマラインの北側、火口、ミルクロード、箱石峠あたり。朝起きて阿蘇山を見たら雲がかかってなかったので、とりあえずパノラマライン北側から初日時間切れで行けなかった中岳火口を目指す。

 

ところが、走り始めると正面の阿蘇山がどんどん雲に覆われて行くのが見え、中岳から高岳あたりは完全に雲に隠れた。根子岳のギザギザした特徴的な山頂部も全く見えなくなった。

 

阿蘇駅前にいたウソップ。ワンピース読んだことも見たこともないけど。

 

絶景と神秘の世界へ

パノラマライン北側は、阿蘇山に登る道で最も景色が良いと言われているらしい。実際に序盤数キロを過ぎると、すぐに牛の放牧地が大パノラマで開けた。他のルートよりも景色が開けるのが早いので、たぶん1番楽しいルート。元気に歩き回る牛が至近距離で見れる。

写真を見ればわかりますが、天気が悪いです。このあたりからパラパラと小雨に降られ始めました。しばらくは降ったり止んだりを繰り返す感じだったのでそのまま登り続けることに。

山の上の方、明らかに天気悪い。

霧に包まれた米塚とカルデラ盆地の風景は幻想的で美しい。景色のいい場所って、結局晴れでも曇でも雨でも景色良いんだよな。

 

高度を上げるにつれ霧が濃くなり(というか雲の中に入っていき)、小雨がやまなくなった。草千里ヶ浜は、初日見た景色が嘘のように霧で何も見えない。でもまあ山はこういうのが楽しくもあるんだけど。

小雨とは言え結構濡れてしまったので、草千里ヶ浜のレストハウスで少し休んで、山頂まで行くかどうか検討。SCWでは昼過ぎにかけて雲が薄くなっていく予報だったので、とりあえず山上広場までは行くことにした。

 

霧に包まれたミヤマキリシマも幻想的で良い。

 

とりあえず山上広場まで登ったけど、まだまだ霧は濃く、絶賛雲の中。

写真の左斜め奥に向かうのが火口へと続く公園道路なんだけど、あんまり霧が濃いし路面がウェットなので、行くかどうか少し悩む。ここまで来たら何としても火口まで行きたい(というか有料道路区間の激坂を登り切りたい)と思う反面、スリッピーな激坂は危ないからやめた方がいいのでは?ほら、4日目でもう疲れてきて足動かんし、雨面倒臭いし。と思う気持ちも。

 

しばらくぼんやりしてたら霧が少し晴れてきたので、ああ、これは行くしかないと確信して突撃。結論から言うと、行って良かった。

 

有料道路区間は周囲に草木が一切無い荒れ果てた大地で、その中で前方に薄ぼんやりと浮かぶ道路がめちゃくちゃ画になる。この構図、意外にもこの天候と相性が良く、なかなか見ることのできない神秘的な風景だった。

 

坂も特に後半はかなり頭がおかしい斜度で、「この斜度はおかしい」「どうしてもっとワインディングで緩くしなかったの」と思うのだけど、よく考えたら、斜度以前にこんな火山の噴火口に道を作ってること自体よっぽど狂ってるわけで、斜度18%程度の坂ぐらいで文句言ってる場合ではなかった。

路面が程よくガサガサだったのと、ダンシングのトルクのかけ方が上手くなったのか、濡れた路面にしては危な気なくスムーズに登れた。などと言うと余裕そうだけど、わたくしのガラスの心肺は割れそうだったことだけは書いておきます。

 

ゼェーゼェー言いながら休んでたら、警備のおっちゃんが「自転車はここへ立て掛けといたらええ」と何らかの施設の跡地的なものの壁を指してくれたので、お礼を言って自転車をなんかよくわらかない壁に立て掛けて、阿蘇の火口へ。

 

緊急避難用の壕的なものがたくさんあるけど、阿蘇山ぐらいの火山が本気で噴火したら、こんなもん何の役にも立たんだろうなあ。濃霧と相俟って、まるでディストピア

 

火口は曇りすぎてて何もよう見えんかったけど、それでも吹き出す噴煙は見えたし、落ちたらガチで死ぬ火口を目の前で見たのは貴重な体験だった。ここは天気良い日にまた絶対来ようと思った。

 

火口周辺を何だかんだ30分ぐらい散策してたけど、それでも雨は止まないし、何なら登って来た時より雨が強いし視界が悪い。待ってても良くなる気配を感じなかったので、鬼斜度の公園道路をダウンヒル。がっつり雨の中のダウンヒル、久々すぎて普通に怖かった。登ってきた時より気持ち霧も濃い。

 

登って来た道をそのまま北側へダウンヒル。雨のダウンヒルはかなり最悪ですが、牛の放牧地らへんまで下りたら雨は止んでいた。本当に山の頂上付近だけ雨が降っていたようで、周囲よりも高い山ならではの天気。

米塚の霧も晴れていた。

雨からの脱出、そしてチルアウト

下山したらあか牛丼(洋風ではなくノーマル)とあか牛の出汁が効いただご汁と高菜メンチでハイカロリーなランチ。

だご汁まで牛の出汁がガッツリ効いてて超うまい。あと高菜メンチがくっそうまい。日常的に高菜メンチ食いながらビール飲みたいから東京でも売ってくれ。

 

その後は、県道11号からミルクロードを走るか、箱石峠を越えて南阿蘇を流すかする予定だったけど、東に向かって走り始めてすぐ、宮地に着く前に雨が降り始めた。この雨が、満足した心と疲れた身体にしっとりと沁み込んで、「あ、もう満足しきったからこれで旅を終えよう」と思った。既に山の上で雨に降られて疲れてたし、昨日のメカトラもあったので、危ない橋は渡りたくなかった。そう思うと急に全身が脱力して、もう山には登らずに、盆地の中を流して国道57号で真っ直ぐ空港に戻ろうと思った。

 

・・・と思った矢先。もう坂は登らんと思いつつも、予定してたデカいクライムがなくなると、その辺の気になる脇道を登ってみたくなっちゃうのはもう病気か。内牧の外れにある「そらふねの展望台」に行ってみようかと道を登り始めたけど、子の権現+++みたいなレベルのクソ坂だった。コンクリ舗装で20%オーバーなぐらいの坂が「え?このぐらい普通ですが?」みたいな涼しい顔して1-2km続くみたいなヤバい道だった。

 

この斜度で軽トラ仕様の道幅なのに、怖いことに上からちょいちょい観光客のミニバンが降りてくるのが恐怖だった。子の権現というより三浦半島の武山みたいな印象で、あっという間に心が折れた。進むのがやっとなクソ坂登ってる時にビンディング外すの、すんげえ怖いんよ。というわけで途中で尻尾巻いて逃げました。写真はありません。

 

盆地の真ん中は通らずに、北側外輪山の縁を走ってたら、あのラピュタ道の麓の公園まで登る道があったので寄り道。ここは斜度が良心的で登りやすい。道の終点が近づくと、正面には度々崩落を繰り返したことが窺える険しい山肌が。

 

終点です。

公式に「ラピュタの道」と呼ばれるまでになった地形ゆえに廃道が決まったこの険しい林道には、もはや入ることが出来ない。周りに全く人の気配が無くて、ああ、ここはもう人の手が届かなくなりつつある世界なんだなあ、と感じる。

 

この舗装路の終点、なんかきれいな公園みたいな感じになっていて、時期が良ければ花を見に来る人が居るとか居ないとか。

整備された芝の広場にはバイクラックまであったけど、ここを訪れる自転車乗りはそう多くないんだろうな。

約束の地

来た道を引き返して、ゆるゆると盆地を走ってたら何やら晴れて天気が良くなってきた。曇り空に引っ張られてチルアウトしつつあった心身のテンションがアッパーに向き始める。で、赤水のあたりで北側に見えたこの景色。

ちょうどミルクロードの西側の終点にあたる二重の峠方面。この景色を見たらもう。そこまで登るしかないでしょう。というわけで57号を下るのはやめて、二重の峠へ。

 

くまもんに見えなくもない何か(左)と、多分くまもんなんだけど顔が怖すぎる何か(右)。

 

霧の中とか、心の機微をくすぐるような神秘的な風景が多かった4日目。それももちろん最高なんだけど。やっぱり自転車で坂を登るなら。抜けるような見晴らしの良い景色が見たいよなあ!!!!

最高です。

 

4daysの旅の最後に「ちょっとオマケ」みたいな感じでこんな景色見れるのヤバくないか?そういうところが(サイクリストにとっての)阿蘇の本質なんだと思った。これはもう約束の地。

そう、つまり、阿蘇は何処を走っても絶景ってこと。

そしてこれが旅の最後のハイライト。

 

The End of the Great Escape

県道339号の長ーーーーい下り坂を一気に下りて、大津の街を抜けて、西原の高台に登れば、あっという間に旅の終着地点、熊本空港。

 

重めのメカトラに遭遇しつつも、怪我も無く、人の優しさに助けられ、結果的に「最高だった」しか感想が浮かばなかった旅は、こうしてフィナーレを迎えたのでした。

 

馬刺し全然食い足りなかったから超食った。飛行機待ってる間に。