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阿蘇への大脱走 Day2 - 2023/5/26

せっかくここまで来たら、やまなみハイウェイ、走りたくない?そしてその先にあるはずの秘密の絶景を、どうしてもこの目で見てみたくない?というわけで阿蘇を飛び出して由布院を目指す2日目。

走行ルート

 

自転車旅でこそ入るべき朝の温泉

6時に起きて朝風呂。最近温泉に泊まると朝軽く温泉につかることが多いんだけど、これがかなり良い。起き抜けに入ると血が巡って目が覚める。身体も解れる。温泉は最強のウォームアップ。

 

約束された絶景

まず目指すのは、阿蘇を代表する絶景スポット大観峰。普通に有名な観光スポットらしいので平日の朝に行くのが吉と読んで、内牧から最短で大観峰を目指せる国道212号をクライム。ミルクロードに上がる道としては、やまなみハイウェイの県道11号か、西側の赤水から二重の峠に登る県道が自転車乗りにはメジャーな気がするけど、最短で大観峰を目指すのを優先。結果は大正解。朝早いのもあってか、言うほど交通量も多くなくて普通に走りやすかった。

前半2/3ぐらいは林の中のワインディングを黙々と登るオーソドックスなヒルクライムだけど、後半は景色が開ける。

後方にはさっきまでいた内牧などカルデラ内の町が眼下に広がる。

 

前を向けば壮大に広がる牧草地。外輪山のピークにあるミルクロードをやや見上げる視点が格好よくて、そこを走る車も小さく見える。すり鉢状に落ち窪むカルデラ盆地の険しい地形が理解できるパノラマ。

やっぱり阿蘇の景色は狂ってるなあ、と思った。

 

国道212号を登り切ってミルクロードに入ると、左手には緩斜面の牧草地が広がり、遠くに九重連山を望む絶景。右手には阿蘇山。正面と後ろは永遠に続くようなスカイライン。約束された絶景。スケールが大きすぎる。最高すぎて笑いと独り言が止まらない。

 

 

 

そしてこの旅のハイライトの1つ、阿蘇大観峰

大観峰は北側外輪山で1番標高が高い場所(たぶん)。ミルクロードから脇道に逸れて、三角形に張り出した台地の上を少し進むとレストハウスのある駐車場につく。外輪山からカルデラに張り出した台地なので360度のパノラマ。アドレナリンが止まらなくて、よくわらないテンションになってた。駐車場から先、大観峰の先端へは自転車も進入禁止の遊歩道なので、レストハウス脇のバイクラックに自転車を置いて散策する。山と草原を撫でる冷涼な風が吹き抜ける爽快さ。天気にも恵まれた。語彙が無くなる。

 

欲張り自転車乗りは阿蘇に留まらない

ミルクロードを少しだけ東に進むと、若干周囲より低くなった谷筋に落ちてやまなみハイウェイと合流し、しばらく牧草地に囲まれた谷筋の道を走る。

 

そこから少しだけグイッと登ると台地の上に戻る。ここが360度パノラマの超気持ち良いエリアで、北には九重連山、南には阿蘇山が見渡せる絶景ポイント。目印は「夢広場」というレストハウスみたいな場所。ここは本当に景色が良くて、やまなみハイウェイでも指折りの絶景ポイントだと思う。

 

しばらく開けた景色の中を九重連山めがけて走り、産山村南小国町へ分岐する十字路を過ぎると、森の中に入り登り基調に変化。次に景色が開けるのは瀬の本高原。眼前に九重連山が迫る。標高が900m以上あるので、吹き抜ける風が涼しくてとても気持ち良い。

 

ここで昼メシ。人気があるという郷土料理屋で高菜飯とだご汁などを食べる。だご汁は野菜がたくさん入ってて栄養満点。程良い塩気に、味噌と野菜の甘みが染み渡る。テラス席で気持ち良い風を浴びながらの気持ち良い食事。贅沢な時間である。

 

瀬の本高原を過ぎると、やまなみハイウェイの最高標高地点、牧ノ戸峠への本格的なクライムが始まる。登り始めるとすぐに大分県に突入。尾根でも谷でもない、何とも変なところに県境がある。


全体的に斜度はほどほどで、瀬の本から峠まで標高差も400m弱。標高が高く、かなりカラッとして涼しいので、かなりスムーズに登れた。途中には瀬の本高原阿蘇を見渡せる展望スポットもある。

 

牧ノ戸峠は周辺の山々への登山口、ハイキングの拠点になっている場所で、広めの駐車場に車がたくさん。レストハウスもあって、おにぎり、いきなり団子、ソフトクリームなどが食べられる。トイレも完備。鞍部なので展望はないけど、空が広く明るくて雰囲気はとても良い。登り切った達成感もある。

 

この牧ノ戸峠で、木曜の朝に空港で会って「どっかで会うかもしれないですねー」などと話した兄ちゃんと奇跡の再会。なんと昨晩泊まってたエリアが同じ、昨日と今日の走行ルートもほぼ同じ、そして今日のゴールエリアも同じというすごい偶然。お互いの旅を讃えて別れる。

 

牧ノ戸峠を越えれば、あとは由布院までほぼ下り。北側へのダウンヒルは舗装も線形も良くて、初見でもかなり爽快に飛ばせる良い道。5kmほど下ると長者原という湿原のような場所に着く。ここから振り返って見る九重連山がド迫力の絶景。

 

その先の飯田高原(はんだこうげん、と読む。いいだじゃねえのかよ!)も景色が開けていて、南に九重連山がよく見える。

 

景色的にはこの辺りまでがピークかな、という印象。この先は由布院まで森の中を走る時間が長く、景色はやや地味になる。

 

だいぶ由布院に近づいた所にある蛇越展望台からは、目の前に由布院の盆地と由布岳が綺麗に見えるなかなかの展望スポット。気を付けてないと地味過ぎて素通りしそうな場所。

 

そこからは由布院まで一気にダウンヒル。久留米・日田方面からの国道が合流する水分峠からは交通量が激増。道も狭いのでかなり走りにくくなる。

 

阿蘇と九重とやまなみハイウェイのその先

下り切れば由布院の中心街に辿り着くので、そこで本日のゴール・・・ではありません。一度由布院の市街地を通り過ぎて、そのまま別府方面に抜ける県道へ向かいます。どこぞのスカイラインのように開けた景色の中をワインディングする気持ちの良い道をグイグイ登っていきます。

時刻は夕方4時をまわったぐらいですが、雲がかかったり青空が見えたり、目まぐるしく空の色が、もとい文字通り「空模様」が変わる。「そこ」に着いた時、由布岳が厚い雲に隠れていないことを祈りながら、グイグイと登っていく。


5km/300mほど登ると右手に山に沿って細い林道が分岐していて、その林道をさらにグイグイ登っていくと、「そこ」に辿り着く。

「そこ」には、ただ目の前に広がる絶景あった。他には何も無かった。何一つも無かった。

目の前にド迫力の由布岳が迫り、その下には今登ってきたスカイラインのような道がくっきりと見える。左手には由布院の市街をも臨む。

タイミングよく、山頂付近の雲もほとんど消えていた。ああ、これこそが、まさに私が由布院まで来た理由なのだ。

 

阿蘇の「約束された絶景」とはまた何かが違う、この風景。大観峰もミルクロードも最高だったけど、それ以上に、何て言うか、今日は本当にこのために走って来たと心から思える景色。あるいは、この喜びのために生きている、と心の底からエネルギーが湧いてくるような力強い景色。

 

ところで一緒に写ってる黄色いバイクは別に同行者とかではなく、そこでたまたま会った近所のおっちゃんの。林道を登ってたらチネリのピストバイク(!)に乗ったおっちゃんに抜かされて、絶景スポットで写真撮りながら雑談してた。

 

最高の絶景を楽しんだ後は、宿でひたすら寛いだ。町の中心からちょっと外れたところにある家族経営の小さい宿で、民宿とか田舎の親戚の家みたいな雰囲気で本当に居心地が良かった。

 

温泉とうまい酒と飯で一日を〆る。