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奥只見紅葉ライド day2 - 2022/10/28

奥只見だけじゃ済まない奥只見ライド。

 

檜枝岐で温泉に浸かった上に大量の山菜とキノコを食ったからなのか何なのか知りませんが、まあまあ脚が復活した翌朝。こんなところまで来て奥只見だけで帰るなんてもったいないぜ。

 

ルート

2日目のルートはこんな感じ。

檜枝岐→只見→田子倉湖→六十里越→小出→浦佐

走行距離約139km、獲得標高約1000m

 

極寒の檜枝岐

天気予報である程度予測してたんだけどくっそ寒い。朝の気温は氷点下。普段の真冬ライドでも朝の気温が氷点下ってことは普通にあって、すぐに坂を登って身体を温めてるんだけど、この日のルートだと檜枝岐から只見まで約60km延々下り基調。快走路だったけどマジで指先が凍る。当たり前のように霜が降りている。

 

快晴の奥会津

何を以って奥会津と呼ぶのかよくわかりませんが。

朝も8時半を過ぎたぐらいからようやく太陽が山の稜線を越えて川沿いにも差し込んできて、気温もぐいぐい上昇。ひたすら伊南川に沿って只見へ向かって下っていきます。あまりにも天気が良いのと、周囲の山々の紅葉が意外にも濃くてきれいなので、たくさん写真を撮ってしまいます。

 

伊南の村にはクソでかいイチョウの木がありました。福島の山の中だからもうきれいに黄色くなってるかなと思ったんですが、黄緑でした。しかしでかかった。

 

伊南のあたりからメイン通りの国道を避けて、川の対岸の県道とかを走っていたのですが、交通量が少なすぎるので2車線の道幅がある超快適サイクリングロード状態。このぐらい田舎だと国道沿いでも車は少ないんだけど、脇道に逸れると交通量ほぼゼロなので最高。

 

一応、7時頃には檜枝岐を出発したんですが、60km先の只見に着いたのは出発から4時間後の11時過ぎ。ほぼ予定通りの経過時間なんですが、全く坂を登っていないのに昼近くになったことには違和感しか無いし、半日弱で走行距離が既に60kmというのも違和感。というかよくわからない。ところで、これまで通ってきた町が田舎すぎて只見の町がクソでかく見えたんですが、只見もコンビニがYショップしか無いし普通にクソ田舎だった。

 

只見ダムと田子倉ダム

只見の町を西に抜けるとすぐにほとんどの標高差もなく只見ダムが現れます。なんのためのダムなのかとかは全く知りませんが、開けた景色の中に急にだだっ広いダム湖が出てくるのは、一般的な山間部の深い谷を沈めたダム湖とは違った趣があって面白い。

 

只見ダムの先には早くも不穏な光景が目に飛び込んできます。つまり、田子倉ダムの高い堤防が見える。昨日の枝折峠尾瀬御池のクライムで疲れている私は「え?これ登るんですか?まじで?もう目の前だけど?」と言います。坂好きの私は「え?登らないんですか?逆に聞きますけどこのぐらい楽では?」などと言います。

 

結局は登る以外の選択肢は存在しないんですが、ワインディングがすごいきれいだったし登った先の田子倉湖もきれいだった。

 

六十里越クライム

田子倉湖を過ぎてからさらに山を登っていき、新潟県に至る道を六十里越と呼ぶそうです。六十里って何だよって思いますが、由来は省略します。この国道には「雪わり街道」という別名が付けられているそうなのですが、こないだ雪崩で橋が丸々1本流されて消えたらしいので、「雪割り」というより「雪割られ」街道だな、とか思いました。

 

肝心のクライムルートですが、田子倉ダムサイトからは距離にして10kmほど続きますが、標高差は250mほどで、ぶっちゃけ坂は対してキツくない。ですが、ダム湖の脇の断崖をグイグイと登っていくので、徐々に湖面が遠くなっていくのが気持ち良い。

 

湖面とは逆の山を見ると、奥只見に負けないぐらいにエグい紅葉の山々が目に飛び込んできます。

 

奥只見と比較するならば、田子倉湖は紅葉が美しいというより、山の地形の荒々しさを強く感じる。ゴツゴツした急峻な斜面が目立ち、スノーシェッドがとても多い。

 

街に暮らす人間が安々と行けない秘境ならではの圧倒的なスケール。

 

峠のピークはスノーシェッドの中で、ピークを過ぎて下り始めたところで県境のトンネルに入ります。そしてトンネルを抜けた新潟県は、紅葉とススキが織りなす豊かな秋の山でした。

 

小出郷・上原高原

時間が余っていたので、小出市街に抜ける前にちょっと面白そうな場所を見つけて1.5kmほど坂を登ってみたら絶景でした。ここまで来るとさすがに疲労で語彙力もなくなります。

 

 

 

奥只見紅葉ライド day1 - 2022/10/27

プロローグ

去年から行こうと決めていた念願の奥只見へ。


新潟県福島県の県境に位置する奥只見湖。河川としては阿賀野川の最上流部に位置する。その紅葉はとても凄まじいらしい。自転車だとクライムが多い比較的タフな山岳ライドになり、かつ途中の補給ポイントが皆無に等しい秘境であるため、かなり難易度が高いことは間違いない。日の短い紅葉シーズンに私の走力では日帰りでの奥只見攻略は難しく、泊りがけで行こうと決めていた。

 

輪行で奥只見を目指す場合のスタート地点は、西側からなら上越新幹線浦佐駅もしくは上越線小出駅が最寄り。東側なら野岩鉄道東武線の鬼怒川の先を走る超ローカル私鉄)の会津高原尾瀬口駅。今回は長岡に前泊して早朝に小出駅からスタート、福島県檜枝岐村に泊まることにした。

 

ルート

初日の走行ルートはだいたいこんな感じ。

小出駅枝折峠→奥只見→尾瀬御池→檜枝岐

 

小出市街から枝折峠までは獲得標高1000m弱の登り。奥只見湖周辺でのアップダウンで獲得標高600mほど。奥只見から尾瀬御池まで800mほどの登り。全体で距離約95km、獲得標高約2400mというわりとハードな山岳ライド。

 

小出をスタート

まずはスタート地点の小出駅輪行解除。平日の早朝とあって、電車も駅も地元の高校生がたくさんいた。

 

小出市街は濃霧に包まれていた。盆地特有の朝霧。1年前に長野の鬼無里で同じような濃霧に包まれて、幻想的な体験をしたことを思い出す。

 

この先にまともな補給ポイントは無いので、小出市街のコンビニで1日分のカロリーと水分を買い込んだ。

 

小出市街から大湯温泉あたりまでは緩やかな登り基調。大湯温泉までは人家があり、自販機や商店なども点在している。大湯を過ぎると人家が途絶えて、雰囲気が山道のそれに変わる。霧の盆地を抜け出して、天気は快晴。正面に越後駒ヶ岳(たぶん)が見えたりもする。

 

枝折峠はエンドレス絶景クライム

開けた道が一旦林の中へと入っていくと、駒の湯山荘という温泉宿へ向かう分岐が現れる。ここから枝折峠への本格的な登りが始まる。この分岐から距離約10km、獲得標高約700m。つまり平均斜度7%で距離10kmなので、かなりハードであることは間違いない。ところが実際に走ってみると、ほぼ全区間絶景が続くもんだから、長さもキツさも全然感じなかった。

 

序盤のワインディングをこなすと、いきなり越後駒ヶ岳がとんでもない迫力で眼前に迫る。山頂付近は微かに雪が積もっていて、その下の山腹と稜線は紅葉で真っ赤に染まっている。早くも目に飛び込んできた絶景に思わず立ち止まって何度も写真を撮ってしまう。

 

さらに絶景は延々と続く。そもそもこの道自体が高木の少ない断崖の斜面を這うように作られているようで、日差しを遮るような林の中に入ることはほぼ皆無。前にはこれから進む道がはっきりと見え、振り返ると今まで走ってきた道がくっきりと見える。

 

先に進む道が見えなくなれば「あのカーブの先はどうなっているんだろう」「その先にはどんな景色が広がっているんだろう」と無限にワクワクが止まらない。いくら登ってもぜんぜん疲れない。景色良すぎて永遠に疲れを感じない麻薬クライムと言えば渋峠が有名ですが、枝折峠へのクライムもそれに勝るとも劣らない絶景が続く。

 

だんだん近づいてくる越後駒ヶ岳

 

絶景でヘラヘラしながら登っていると、ラスト2kmぐらいで枝折峠は唐突に牙を向いてきます。斜度が急に上がって、ここまで10kmぐらい登ってきた脚を殺しにかかってきます。階段状にキツい所と緩む所がはっきりしているので、脚付き無しを狙っても何とかいなせるとは思いますが、瞬間最大で18%ぐらいまで斜度が上がります。

 

18のとこじゃなかったと思うけど終盤のキツい斜度のところで後ろを振り返った写真。わかりにくいけど日本海まで見えます。

 

枝折峠はここ最近雲海で超有名になったからか、平日にも関わらず駐車場はたくさん車が停まっていて、人も(僻地の山の中のわりには)たくさんいました。そして枝折峠付近と、峠を越えた反対側の景色を見て私は我が目を疑いました。峠の向こう側には見渡す限りどこまでも赤黒い山が続き、尾根と谷、すなわち山の形があまりにもくっきりと見えた。秋にしか見ることが出来ない山の色が、秋にしか見ることが出来ない澄んだ空気によって、はるか遠くまでくっきりと見渡せました。

 

そして絶景の奥只見へ

この時点で、延々と続いた絶景に「もう帰っていいか」ぐらい満たされていましたが、枝折峠からのダウンヒルで、いよいよあの"奥只見"が姿を現しました。

 

赤い。山が険しい。山と湖と道しか無い。

 

ハイライトは何と言っても恋ノ岐乗越の手前で見える東ノ城・西ノ城と、恋ノ岐川沿いの渓谷の断崖。このあたりは奥只見の中でも奥の奥。魚沼からだと枝折峠を越えてしばらく走らないと辿り着けないし、会津からだと長距離走った上に尾瀬御池の峠を越えないと辿り着けない。このあたりの風景こそが奥只見なんだと思った。

 

奥只見を越えて尾瀬

奥只見の湖を見下ろす絶景エリアを過ぎ、比較的長いダウンヒルを終えると、さっきまで遥か眼下に見えていた湖がいつの間にか道路のすぐ横を同じ高さで通る川になっていた。川に沿って道は緩やかに登り始める。奥只見を越えて、尾瀬御池へ向かう長い登り坂に入った。

 

15時頃に県境を越えて福島県檜枝岐村に突入。空に雲が広がって薄暗くなってきたのも相まって、絶景がモルヒネのように効いていたここまでの登り坂の疲労が一気に脚を襲ってくる。遥か遠くに尾瀬のシンボルでもある燧ヶ岳が見える。

 

ここからはなかなか景色が開けない林道然としたクライムが始まる。紅葉で雰囲気は抜群だし舗装はきれいだし車はほとんど通らないし、めちゃくちゃ走りやすい。走りやすいんだけど、曇ってきて薄暗い天気と、標高差700mを登らないといけないという数字上の事実、既にかなり疲労してる脚が一気に心身に重くのしかかってきて、このあたりがこの日で一番辛かった。

 

高度が上がってくると徐々に景色も開けて来て、何ならちょっと西から日差しも入ってきて、紅葉をオレンジの西日が照らす奇跡的な風景も見れたりした。いや、あるいは色合いとしては西日でよりオレンジになったこのへんの紅葉がこの日一番きれいだったかもしれない。

 

ボロボロになりつつあった脚では前に進むのが精一杯で、16時半を過ぎてようやく御池の駐車場に着いた。山は17時前にはすっかり暗くなるこの時期、尾瀬の玄関口である御池駐車場に人の姿は皆無。沈む夕陽がただ空の端をオレンジに染めているだけで、間もなく山に夜の帳が下りることだけを確かに示していた。

 

夕暮れ檜枝岐へのダウンヒル

暗闇の山道のダウンヒルほど怖いものは無い。これを下りたら今日の宿に着けるし温泉に浸かって身体も温められる。早く下りたい。そう思う反面、このダウンヒルでもとんでもなく美しい紅葉を見ることになる。これは神の悪戯だろうか。ちなみに写真はiPhoneの自動補正が入っていて普通に明るく見えるけど、実際には恐ろしく暗かった。

 

かくして、1日のほぼ全てを絶景に彩られた約95kmの秘境ライドをひとまず無事に走り終えた。